【フラワーピックアップ】花の新しい価値を伝える、ジャパンフラワーセレクションの取り組み
花の新しい価値を伝える、ジャパンフラワーセレクションの取り組み
ジャパンフラワーセレクション、通称JFSは、日本人の感性に響く優れた花き品種を、コンテスト形式で選定する取り組みです。今回は、ジャパンフラワーセレクションの事務局の三井直子さんに、その理念や審査の特徴、事務局運営で大切にしていることなどをお聞きしました。
取材・文/小林 渡(有限会社AISA)
写真提供/ジャパンフラワーセレクション(JFS)
「いい花」の価値を、品種の特性から見つめる
JFSが掲げている言葉に「いい花の新基準。」があります。ここでいう「いい花」とは、いわゆる見た目の美しさにとどまらず、病気や暑さに強いこと、家でも育てやすいこと、飾ったときに長く楽しめること、購入しやすいことなど、ぱっと見ただけではわかりにくいけれども、実際に花を楽しむ人にとってとても大切な要素を含みます。JFSは、植物の出来栄えを競う品評会とは異なり、品種そのものが持っている特性を評価する取り組みなのです。
「耐病性や耐暑性など、目に見えにくい品種特性の優れた点や新しさも採点の項目に入っていますし、特にガーデニング部門では、それを確認するために数か月の栽培観察を経て、賞を決定しています」。「いい花」にとことんコミットする、それがJFSの基本方針といえるでしょう。
部門ごとに様々なチェックが行われる審査会
JFSの審査は、部門ごとに、品種の特性が細かくチェックされます。
「切花部門」や「鉢物部門」では、花色や花形、花もち、飾りやすさなどが詳細にわたって評価されます。
また、「ガーデニング部門」では、実際に苗を植え、数か月にわたって生育を観察します。
庭や花壇で育てる植物は、購入したときの姿も重要ですが、むしろ暑さや、雨、風への耐性、株姿の乱れにくさ、花期の長さなども検討材料です。こうした性質は、時間をかけて育ててみなければわかりません。
「消費者の視点から新品種を見て、多面的なチェックを行い、審査しています」と語る三井さん。
こうしたJFSの評価は、グリーンアドバイザーとして人に花をすすめるときも役立つのではないでしょうか。
順位づけではなく、品種の価値を伝えるために
「JFSが行っているのは、コンテストという手法を使って、育成者が互いの技術を切磋琢磨できる場所をつくること。そして、その価値を消費者に伝えること」です。順位をつけることよりも、技術発展に貢献する場にしていくという姿勢が事務局には貫かれています。
育種家たちが新しい品種を生み出す際は、長い時間と多くの試行錯誤が必要であり、優れた特徴をもつことに加えて、育てやすさや流通のしやすさ、家庭で楽しむ場面まで考慮されています。しかし、その努力や技術は、なかなか一般の消費者が知ることはできません。JFSは、その見えにくい価値を審査によって言葉にし、消費者や販売の現場へ伝える役割を担っているのです。
また、JFSの運営で大切にされていることの一つに、「審査結果を出品者にきちんと返す」というものがあります。「出品されたすべての品種について、審査員のコメントは審査講評文としてまとめ、出品者にお戻しするようにしています」。
受賞の結果にとどまらず、審査員がその品種をどのように見たのか、どの点を評価したのかを出品者が知ることができる。これは、出品者にとって貴重なフィードバックになります。専門家からの声は、次の育種や販売、PRにもつながっていくからです。
今までと変わらない安心感を大切に
JFSは2006年の春に発足し、20年近くが経ちました。2025年の4月からは新しい事務局に運営が引き継がれています。引き継ぎにあたっては、出品者や審査員、関係者の皆さんにとって、これまでと同じように運営を続けることを何よりも大切にしたといいます。
「関係者の多い事業ですので、運営が継続できてよかったという気持ちです」。
出品者、審査員、審査会場の関係者、ロゴマークを使用している事業者など、JFSには多くの関係者がいます。制度が急に変わってしまえば、受賞品種のPRや今後の出品にも影響が出かねません。
「出品者の皆さんには、できる限り今までと同じような運営やサービスを提供すること。そして同時に、持続可能な方法で運営できるよう、再考できるところはしていくことが大切」と三井さんたち事務局はこの先を見据えています。
日本の花き文化を、次の時代へつなぐ
2027年には、横浜で国際園芸博覧会の開催が予定されています。日本の花き産業や園芸文化に国内外から注目が集まる機会を前に、優れた新品種を認定し、その価値を伝えるJFSの役割はますます重要になっています。
海外と日本のコンテスト会場の展示方法の違いでいえば、海外の園芸博では、主催者側がその場や花に合った花器を選び、場合によっては他の花材と組み合わせることもあるといいます。あくまでも、来場者がその会場を心から楽しめるように、花の魅力を存分に伝える工夫がされていることが多いのだとか。
一方で日本のコンテストでは、JFSも含め、出品された植物を公平に審査するため、同じ展示台や花器、同じ条件下で淡々と展示することが重視されます。
「国や文化による感覚の違いで、評価の仕方についても異なる点があるかもしれません。例えば海外では、大きな花や、力強い草姿になるような仕立てが評価されることが多いように思います。一方、日本の育種家さんや生産者さんは、より小さな花を生み出したり、茎を細く繊細に仕立てたりすることを追求する場合もあります。日本の園芸には、花色や形の繊細な違いを楽しむ感覚や、生産効率だけを追い求めるのではなく、技術を尊ぶ感覚があるのでは」と三井さんはいいます。
そうした日本ならではの感性を大切にしながら、新しい品種の魅力を見つけ、言葉にし、消費者へ伝えていく取り組み、それがJFS、ジャパンフラワーセレクションといえます。
園芸博は、日本の花き文化をあらためて国内外へ発信する大きな機会になります。その山場に向けて、そしてその先へ。JFSの事務局は、優れた品種とそれを生み出す人たちに光を当てる裏方として、日本の園芸業界の発展に貢献すべく活動を続けています。
◆2026年の切花部門・鉢物部門「春審査会」 審査講評はこちら
https://jf-selections.net/wp/wp-content/uploads/2026/05/JFS2026切花・鉢物部門「春審査会」審査講評文-HP.pdf
◆ジャパンフラワーセレクション 公式サイト
https://jf-selections.net/
ジャパンフラワーセレクション事務局
〒277-0882 千葉県柏市柏の葉6-2-1
千葉大学環境健康フィールド科学センター内
柏の葉花卉園芸学研究室
TEL/FAX:04-7137-8172
