【フラワーピックアップ】島根県のアジサイ新品種「瑠璃るらら」開発ストーリー

島根県のアジサイ新品種「瑠璃るらら」開発ストーリー

島根県 農林水産部 農業技術センター 宇山嘉秀さん インタビュー

島根県は「万華鏡」「銀河」をはじめ6種類のアジサイを開発し、いずれも全国的に高い人気を誇っています。7品種目として開発された「瑠璃るらら」はこのたび「ジャパンセレクション」でグランプリを受賞。颯爽とデビューを飾りました。島根県農業技術センターでアジサイを担当する宇山嘉秀さんに「瑠璃るらら」開発の過程や今後の抱負などをお聞きしました。

(プロフィール)

宇山嘉秀 島根県農林水産部 農業技術センター 栽培研究部特産園芸科 科長

東北大学大学院生命科学研究科修了後、民間の種苗会社に20年間勤務し、2021年入庁。米の普及員を経て2023年から農業技術センターの研究員として花きに携わり、昨年からはアジサイの試験研究担当となり「瑠璃るらら」を受け持っている。

 

島根県7品種目のアジサイ「瑠璃るらら」、颯爽とデビュー

この春、島根県のアジサイ新品種「瑠璃るらら」への注目度が一気に高まる出来事がありました。横浜フラワー&ガーデンフェスティバル2026(〈公社〉日本家庭園芸普及協会ほか共同主催)における、新品種の花きに対する来場者人気投票「ジャパンセレクション」でグランプリに輝きました。また同時開催の「ジャパンフラワーセレクション」でもベスト・フラワー賞(優秀賞)、モーストジョイ特別賞、モニター特別賞の3賞を受賞、見事、4つの賞を射止めたのです。

島根県農業技術センターで「瑠璃るらら」に携わる宇山嘉秀さんは「人気投票でグランプリ受賞は素直に嬉しいです。島根県が行ってきたアジサイ育種の方向性が間違っていなかったという自信につながりましたし、島根県は魅力的なアジサイを提供し続けるというメッセージにもなったと思っています」と笑顔で語ります。

 

先行品種との違いを出し、優れた品種をつくる

島根県のオリジナル品種として7番目のデビューとなる「瑠璃るらら」の開発は2010年からスタートしました。

「新品種開発の難しさはまず先行品種との違いを出しながら良いもの生み出すこと。品種の魅力をどう打ち出すか、確固たる特徴を定めていくのが一つ目のハードルです」と宇山さん。「瑠璃るらら」の開発にあたり、当時の担当者たちによって次のような方向性が定められました。「八重咲で見栄えが良く大きな装飾花を持つこと」「覆輪が安定して入ること」「装飾花が咲き進んでも垂れにくいこと」「花房が安定していること」「草丈をあまり伸ばさずコンパクトにまとまること」。

これらを具現化していくうえで、前任者たちの苦労があったことが想像できますが、宇山さんはその一つとして「草丈を伸ばさずコンパクトにまとめる」ことを挙げます。「コンパクトさを追求すると小さくまとまり、高級な鉢花としてそれはマイナス面にもなります。コンパクトではあるが、それを感じさせない草姿と花房のバランスを保つことが難しかったと思います」。

 

ひと目で一気に惹きつける形状と美しさ

宇山さんが前任者からバトンを受けたのは、昨年のこと。すでに商品化へ向けた品種開発の最終工程にありましたが、自身にとって県職員の立場で初めて新品種誕生に関わる「瑠璃るらら」には思い入れも愛着も人一倍。その特徴を次のように紹介してくれました。

「八重覆輪状の装飾花が花房をぐるっと囲む形になるのが第一のポイントです。そして発色が鮮やかで、青と白色の覆輪のコントラストが印象的です。また肥料の応答性が良く、与え方によって発色の鮮やかさが変化し、肥培管理が上手くいくと、より美しく発色します」。

「開花の初期はガク咲きで、開花が進むと花房が盛り上がり半手まり咲きになります。そして当初の開発目標通り、咲き進んでも花房の形状が崩れにくく、長く楽しむことができます」。

今年、初めての出荷が始まっていますが、宇山さんによると、今年は試験出荷という位置づけで流通量は1000株弱。今後、生産数増加と同時に品質の平準化を図り、来年以降出荷量を増やしていくことになります。

 

官民協働の開発体制で「アジサイの名産地」の評価が定着

島根県は「アジサイの名産地」として知られていますが、その栽培が始まったのは2004年のこと。1990年代後半から続いたガーデニングブームが一段落した状況で、新規参入してくる20代、30代の若手の生産者を中心に「春の品目を何とかしたい」という声が高まっていました。

そこで当時の農業技術センターが着目したのが、母の日商戦で支持され始めていたアジサイでした。将来性を感じ、アジサイ栽培を検討していくなかで、全国の産地でも品種登録されている数が限られており、新しい品種を開発していける余地がある、と判断したそうです。

当初はゼロからのスタートであり苦労も多かったそうで、どんな花にするか、親種はどうする、といった基本から学び、時には他県に研修に出かけて技術と知識を習得。試行錯誤を重ね、ノウハウを蓄積し、挑戦を繰り返してきた歩みがあります。

現在は生産者で構成される「島根県アジサイ研究会」が育種に取り組み始め、生産技術の確立、マーケティング、販売までを主体的に担い、島根県はアドバイザーとして活動をサポートする体制に移行しています。そして「島根県アジサイ研究会」と島根県のメンバーにより「アジサイプロジェクト」が結成されており、長期的な販売戦略の策定や新品種投入時期の検討、課題の洗い出しなど県産アジサイの重要事項を議論、決定する場として機能しています。まさに官民協働した開発体制が「アジサイ名産地 島根」を支えているのです。

 

人を幸せにする、より良い花を世の中に提供する

鉢花のアジサイは母の日向けの重要アイテムになっています。一方で市場に流通するアジサイの品種数も、島根県が開発を始めた20年前に比べたら格段に増加しています。新品種の開発は激化し、いかに差別化を図るかがポイントでもあります。農業技術センターでは、「島根県のアジサイは、他と一線を画した特徴がある」という点に自負とこだわりを持って取り組む姿勢を打ち出しています。

また宇山さんは個人的な思いとして次のような心情を語ってくれました。「花は嗜好品であり、金額が張る商品もある一方で、人を幸せにできるものだという思いも持っています。窮屈な世の中になりつつありますが、一人でも多くの方に花を鑑賞してもらい、癒しと笑顔をもたらしたい。そのために良い品種を提供していきたいと思っています」。

 

瑠璃るらら ~島根県公式サイト

https://www.pref.shimane.lg.jp/industry/norin/seisan/engei_shinkou/kaki/ajisaimeisyoukettei.html

島根県のその他のオリジナル品種の紹介 ~島根県公式サイト

https://www.pref.shimane.lg.jp/industry/norin/seisan/engei_shinkou/kaki/shin_hinsyu.html

横浜フラワー&ガーデンフェスティバル2026 ジャパンセレクション 来場者人気投票 結果発表

https://yfg-fes.jp/news/20260521/4308/

ジャパンフラワーセレクション審査結果

※JFS2026切花・鉢物部門「春審査会」審査講評文  – 以下のHP の【審査講評文】のリンクをご覧ください

https://jf-selections.net/results/